センターだより
31Dec2018 新・留学短報(バト・オルシフ)
2019/01/04
2018年6月にモンゴル国立大学法学部を卒業し、現在、名古屋大学大学院に留学中のバト・オルシフ君が日本での生活について書いてくれました。日本でいろいろな経験をし、また日本人の行動パターンについても考えて分析しているようですね。一層の成長を期待しています。
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【留学短報:2018年12月】
日本での生活
-自己改善の観点から-
バト・オルシフ
私の日本での生活は自己改善の一層の進歩の切っ掛けになったように思われる。言うまでもなく、自己改善とは抽象的な概念である。とはいえ、私は自己改善をスティーヴン・R.コヴィーがいった「人間の性質としている精神的、肉体的、知的、社会・情緒的な4つの側面」(*)を基礎にして考えている。これから、以下に自己改善の観点から当該4つの側面に沿い、日本で体験した事例を紹介しながら日本での生活について書きたいと思う。なお、このように書くことにしたのは日本での生活が私自身、すなわち私の基本的な考え方に全体的に強く影響を与え、自己改善につながっていると思うからである。
私が名古屋大学に留学してから約4か月になり、日本人の日常生活に多少触れている。しかし、私の生活は「学生寮・学校・ジム」という基本的なパターンでしか行われていない。そのため、以下に述べることは短い期間と青二才の経験に基づいた、かつ、個人性が高いことであるのを予め述べておきたい。
まず、精神的な側面から、自分の日本での生活について述べる。日本では、大学の教授のような上級レベルの従業員はもとより、肉体労働である引っ越しサービスの労働者、学校の食堂でアルバイトする学生、お店でレジを担当するパートの労働者もプライドを持って仕事を熱心にやっている。その理由がなんであるかを別として、そのように熱心に働く日本人の姿を見れば、無意識的に自分が社会にとって必要な人材であること、言い換えれば居場所を認めてもらい、もらったらそれを維持したいという日本人の気持ちを強く感じる。従って、仕事の経験の浅い私にとってどんな仕事をやっても、自分自身がその仕事を上手にできていると認識するか、できていることを他人に認めてもらうまで続けなければならないという感覚は新鮮なもので勉強になった。その故に、日本人の友達の話によると、日本人が何でもできる能力(一般性)、それに加えて自分しかできない能力(専門性)を身に付けるために頑張っているそうである。やはり彼の言った通り、競争の社会において人は一般性と専門性を持たないと認められにくく、生き残ることができないのである。これを切っ掛けに私は自分の専門性を高めることに注目している。
次に、肉体的な側面から述べたい。日本には太りすぎの人がモンゴルと比べると圧倒的に少ない。私は朝と夜走っている日本人とよく出会っている。また、学校にいつも階段を使っている50代の先生もいる。その先生は毎日何回も5階まで駆け上がったり、駆け下りたりしている。つまり、日本人は普通に体を大事にしている。私はできるだけ自分の体に注意を払ってきたが、日本に来てから体のバランスが失われたことに気づいた。健康的で理想的な体とは持久力・柔軟性・強さのバランスが取れた体のことであることを改めて理解している。その上、健康食品を手ごろの値段で消費することも学んでいる。
それから、知的な側面から述べたい。名古屋大学の留学生の中に母語を除いて二つ以上の外国語が話せる人は少なくない。母語を除いて七つの外国語が話せるウズベキスタンの学生と私は出会ったこともある。また、12月に行われた第17回「大学対抗交渉コンペティション」において、私より若くて言語能力にも法的思考能力にも優れている日本人と外国人の学生と多く出会った。世界が広いこと、頭の良い人が多くいること、自分が未熟であることを国際的な観点から理解した。従って、これから一段と努力しなければならないというプレッシャーを感じた。
最後に、社会・情緒的な側面から述べたい。社会・情緒的な側面とは人間関係を表す。日本人は細い道路で二人が出合ったときに先に相手に道を譲ってあげる、エレベーターを出るときに相手を先に出してあげる、ジムで使ったマシンを運動後に拭いておく、電車の中で携帯電話をマナーモードにしておく、食事をするときに相手の食事ができるまで待つ、いわゆる他人をよく尊敬し、自分の行動をとりあえず抑えている。もし自分の方から先に行動しても、相手の気持ちを予測した上で具体的な行動を取っているように思われる。例えば、ある日ジムで不動式の椅子の上に汗をふくタオルを置いて運動をしている男(A)がいた。そのとき、同じ椅子を使いたい他の男(B)がわざわざ移動式の椅子を持って来て、(A)に「不動式の椅子の代わりにこの椅子を使ってくれませんか?」と丁寧に聞いた。タオルを置いていたAも丁寧に謝り、椅子を交換した。仮に、そのとき、椅子を持ってきた(B)の代わりに私がいたとすれば、他の椅子を持って来ずにただ「この椅子を使ってもいいですか?」と聞いただろう。つまり、(B)は(A)の気持ちを予測して適当な行動をとったのである。従って、人間関係を上手に作るのに相手を尊重して自分の行動をある程度抑え、また相手の気持ちを予測してから行動をとることは大事だということをとてもよく理解できた。
このように、私の日本での生活は新しい事例に出会うことによって私自身全体が影響を受けている生活である。先進国である日本で生活することはそれ自体が勉強になっているといっても過言ではない。日本での生活により、私は以前に感知していなかったことを感知したり、理解しなかったことを理解したりしてきている。そのため、私の考え方が以前より進化し、改善しているのではないかと思う。ようするに、私の日本での生活は自己改善の一層の進歩の切っ掛けになったと思う。
注(*):Anum Hussain, “7 Habits of Highly Effective People by Stephen R. Covey [Book Summary]”, https://blog.hubspot.com/sales/habits-of-highly-effective-people-summary, 29/12/2018.
大学対抗交渉コンペティション7位入賞
2019/01/04
センターの学生4名(5年生3名と4年生1名)が12月1日から2日にかけて上智大学で行われた第17回大学対抗交渉コンペティション(日本語部門)に参加し、英語チームの4名とともに総合7位で入賞、仲裁部門に限れば3位という素晴らしい成績を収めました。
邦字新聞の「モンゴル通信」2018年12月13日号で特集記事にしていただきましたので、以下に引用して学生の声を紹介します。
リーダーのツェベルマーさんは、「大学あげての物心両面の支援があったので、期待に応えられるかどうかのプレッシャーがあった。また、日本語で戦うので、日本の大学とはハンディがあると懸念していたが、論破できてよかった」とほっと肩の荷をおろした。最初に3分間で大学を紹介したナランドラムさんは、「前日からものすごく緊張して、全身が震えた」と打ち明けた。ドルジンスレンさんは、「表彰式の最初に、モンゴル国立大学7位!と呼ばれた時、頭が真っ白になった。うれしかった」と感動を振り返る。「先輩と一緒に国際大会に出られて、相手校からも多くを学んだ。この貴重な体験は今後に生かされる」とボディビレグ君。
・・・10月に主催者から問題用紙が届いた。「日本語と英語で約60ページも。これを個々に読解し、全員で戦略を立て、指導教員を対戦相手に特訓した。」、「意見の違いで大げんかもした」、「時には夜中の1時ごろまで大学に残って想定練習に励んだ」など、全員一致の努力なしでは叶えられなかったと感慨深げ。・・・モンゴル代表チームは昨年に続く2回目にして入賞し、その分、「達成感も大きかった」と話す。
(以上、「モンゴル通信」2018年12月13日号8頁より引用)
20日にはモンゴル国立大で祝勝会が開かれ、エルデネブルガン法学部長から次のようなお話がありました。
わずか4年間・5年間勉強した日本語で日本の優秀な大学の学生たちと対戦し、入賞した学生の努力に感心するとともに、先生方の指導に感謝している。今回の国際大会での入賞は、たいへん名誉なことで、モンゴル国立大学法学部が国際的に見ても高い水準に達してきていることを示すものだ。早速、法学部およびモンゴル国立大のサイトに掲載し、モンゴル国内に発信したいと思っている。
また、随行教員のドガルマー教授からも、次のようなコメントがありました。
私は、1日目の日本語チームの仲裁を見ました。日本語は分からないが、オランゴー先生が通訳してくれた。うちの学生たちは、法的根拠、日本語の面等でとても良かったと私も思うし、そこに見学に来ていたオランゴー先生の博士過程の指導教員(成蹊大学の塩澤一洋教授)も感銘を受けたとおっしゃっていた。学生たちの活躍を見て、名古屋大学日本法センターの設立を実現できたナランゲレル先生にとても感謝したくなった。私たちMUISは国際的に活躍できる人物を育てていることに気づきました。
9月にスクーリングで教えてくださった塩澤一洋先生がブログ(Scrapbox)に詳しく書いてくださっていますので、よろしければどうぞご覧ください。
3年生課外授業:競技かるた
2018/12/21
3年生が「競技かるた」に挑戦しました。
講師の山下先生から事前に出された宿題で「1字決まりの札」を覚えてきていた3年生たち、
競技かるたについて説明を受けた後、さっそく大会の開催です。
競技かるたは日本文化とスポーツの融合とも言われるそうですが、まさに「畳の上の格闘技」。
学生たちも気に入ったようでした。
畳ご持参で、ご多忙の中授業をしてくださった山下先生、本当にありがとうございました。
練習を積んで、いつか「学校対抗スピーチコンテスト」ならぬ「学校対抗競技かるた大会」をモンゴルで開くことができるといいですね。名古屋法センターは必ず出ます!
2年生授業報告:日本事情
2018/12/21
今日は当センターの授業の様子をご紹介します。
センターでは、1年生は日本語の授業のみで、
2年生から少しずつ法学の勉強の基礎となる授業が始まります。
その一つが「日本事情」という科目で、日本の地理や気候、文化、社会などを学びます。
その中で、2つのグループに分かれて自分たちで日本について調べたいこと調査し、
ポスターにまとめ、クラスで発表する時間がありました。
2年生が選んだテーマは
・「日本の雨水利用について」
・「日本のゆるきゃらについて」です。
「雨水利用」と「ゆるキャラ」…目の付け所もユニークですね。
2年生の皆さん、これからもがんばってください。
新潟賞日本語スピーチコンテスト 最優秀賞受賞
2018/10/17
少し前になりますが、9月13日に新潟県国際交流協会主催のスピーチコンテストが行われ、3年生のソヨル・エルデネさんが見事最優秀賞に輝きました!
テーマは「日本との友好交流をどう進めるか」。
皆さんならどんな切り口でスピーチをしますか?
ソヨル・エルデネさんが選んだのは、ずばり「肉と経済」。
「経済」をとりあげたのは「法学を学ぶ身として、人権が守られる世の中でなければならないと思っている。そして、人権が守られるためには国の経済がしっかりしていることが欠かせないと思う」からだそうです。
「肉」を選んだ理由は…言うまでもありませんね。
では、特別に許可をいただきましたので、彼女のスピーチの全文を載せます。モンゴルの若者が考えた、日本との交流のアイデアをお読みください。
日本とモンゴルの友好交流をどう進めるか
友好とは友達と同じ意味です。今日のテーマを聞いて、まず日本とモンゴルは友達になれるような国だろうか、と思いました。日本は世界の先進国の一つです。しかし、モンゴルは正直に言うと、下から探したほうが速いです。そんな違うレベルにある国がどうやって友達になって、両方にとって利益がある状態で交流しますか。私は経済の交流に注目してみました。
去年、モンゴルで世界的な経済セミナーが行われました。このセミナーで出た話によると、日本とモンゴルは経済交流をもっと進めるために頑張っているそうです。でも、日本とモンゴルの貿易はとてもバランスが悪いです。モンゴルと日本の貿易はほとんどが日本からモンゴルへの輸出です。モンゴルから日本への輸出はたったの4%、主にカシミアの輸出です。これは残念なことだと思います。もし日本が他の国から高い値段で買うことを辞めて、モンゴルから安く輸入したら、このアンバランスが直り、モンゴルにもっと利益が出ると思います。
では今から、何を中心にして日本とモンゴルの経済友好流行を進めるか話します。それは肉の輸出です。日本はオーストラリアやアメリカやカナダなどから牛肉を輸入しています。そして、モンゴルの2017年の国内総生産の6倍近いお金をこの国々に払っています。一方、モンゴルには牛が440万頭いて、日本の4年分の牛肉の全消費量を提供できます。ある計算によると、日本もモンゴルから牛肉を買ったら、日本人は今の8分の1の値段で牛肉が食べられる可能性があるということです。そして、モンゴルは、これが実現すれば国内総生産が5%増えるというのです。
もちろん、問題が一つもなく、ものごとが完璧にいくことはありませんから、牛肉を輸出することになったら、色々な問題が起こります。私の考えでは2つの大問題があります。まずは肉の安全性、次は「日本人が食べるか」ということです。
安全性について言うと、現在、日本は「モンゴルからの馬以外の家畜・食肉の輸入は、家畜伝染病予防法により禁止している」という状況です。しかし、日本から科学者を送ってもらい、日本とモンゴル共同で安全な工場を建てて、牛に毎年ワクチンを打つことにしたら大丈夫だと思います。また、モンゴルには家畜伝染病が起こらない地方もあります。南の県には起こりません。この県から輸入してもいいです。加えて言うと、モンゴルでは今まで牛肉を食べて人が亡くなった事件はありません。
では、もう一つ、日本人が食べるかどうかという問題があります。私はモンゴルの肉を使って、日本式のしゃぶしゃぶを出している店でアルバイトをしています。日本人のお客様達の様子から見ると、日本人はモンゴルの肉を楽しく食べられているようです。日本には「為せば成る為さねばならぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり。」という諺があります。やって見ないで、色々な問題が起こるから、無理だと言えません。
また、私は以前、日本で肉を扱っている有名な会社の方と肉の輸出について話す機会がたまたまありました。彼の話によるとモンゴルの肉は美味しくて、モンゴル人は肉の食べ方をよく知っているんですが、世界にどう売るか、売り方がわからないそうです。分からないことを教えるのは友達の義務だと思います。モンゴルはおいしくて安くて安全な肉を提供しますから、日本がこの点で協力してくれれば、カシミアだけではない交流が広がると思います。肉の輸出を通じて、人と人との交流も増えるでしょう。交流の機会が増えれば、もちろん友達としてのきずなも強くなると思います。
肉を中心にして日本とモンゴルの経済友好交流を進めましょう。